歯周病の予防
予防が健康保険で受けられるように
「平成28年4月、日本の「歯科」あるいは「医科」の世界で、信じられないような大変革が、厚生労働省から発表されたのをご存知でしょうか?日本の健康保険制度上で初めて「病気の予防」に対して保険点数が設定され、「予防行為」が診療として認められたのです。
これまでは、健康保険とはあくまで「病気になってから使う」ものであって、病気ではない健康な人は「人間ドック」などを「自費」で受診しなければならず、「予防」にはいっさい「保険不適応」だったのです。それが、突然「予防」が「健康保険」で受けられるようになったのです。
そしてそれは、増え続ける医療費・社会保障費をなんとか削減させるための「最後の切り札」として、国が振りかざした一か八かの頼みの綱なのです。
その「病気の予防」とは、なんと「歯周病の予防」と「むし歯の予防」だったのです。
国がとらえた「予防治療」の重要性
「地域包括ケアシステム」という言葉をご存じの方もいらっしゃるかも知れません。
2025年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になり、現在の社会保障制度が維持できなくなると国も見ています。そこで、従来からの保険制度・介護制度ではなく、地域ごとの医療機関や介護施設がもっと連携をはかり、そこに地域のボランティアなどの力も借りて、きめ細かいケアシステムを構築していこう、というのが「地域包括ケアシステム」です。
その最も根本的なケアシステムの重要な部分に「歯科」が抜擢されたのです。
むし歯や歯周病を減らすことが、生活習慣病を減らし、健康寿命の延長に繋がり、よって増え続ける社会保障費を抑制することが出来る「目玉」だと、国がとらえたのです。
国が決めた歯科医院のグループ
ただし、今ですら膨大な医療費、国には、そんなには予算がありません。そこで、全国の歯科医院を二つのグループに分類して、
- ①従来からの外来歯科治療中心の歯科医院
- ②従来からの外来に加え、「予防・訪問」にも対応した歯科医院
平成28年3月、この二つのどちらのタイプの歯科医院なのか?全国の歯科医院に提出を求めました。
そして、②の「予防型」歯科医院の中からさらに、「地域包括ケアシステム」に参加可能な、高度な連携能力・予防能力のある歯科医院を選別して認可を下して、全国のおよそ10%程度の「包括ケア型」歯科医院を、「かかりつけ強化型歯科診療所(略して「か強診」診療所)」という名称で呼び、その歯科医院のみに「歯周病の予防」と「むし歯の予防」を保険診療で行う事を認めたのです。
全国の約90%の「従来型」歯科医院では、今後、「歯周病の予防」と「むし歯の予防」は出来なくなってしまいました。もちろん行ってもいいのですが、それに対して保険請求をすることが出来ないので、事実上ほぼ出来ないのと同じ事です。
「溝の口佐和歯科・矯正歯科・口腔外科クリニック」も平成29年春に、晴れて「かかりつけ強化型歯科診療所」として認可されることが出来ました。
逆に、「か強診」医院としての「責任」は、非常に重く受け止めております。
地域の方々の「むし歯の予防」「歯周病の予防」ひいては「生活習慣病の予防」「健康寿命の増進」を国から任された訳ですから、他の従来型の歯科医院とは全く違う、しっかりした予防定期管理を、みなさまにご提供させて頂けるよう、努めさせて頂きます。
歯周病は歯茎の病気ではありません
歯周病は「歯茎の病気ではない」ということを、ご存知でしょうか?
実は、歯周病になったからといっても、必ずしも歯茎に何か変化がでるとは限りません。むしろ、見た感じ、大して歯茎に変化がなく、それが歯周病の発見を遅くさせる原因の一つにもなっています。
では、歯周病は、何の病気なのでしょうか?
実は、歯周病は「骨の病気」、「歯を支えているアゴの骨が溶ける病気」なのです。骨が溶けて歯の支えが無くなっていくので、歯がぐらぐらして「歯が抜ける病気」なのです。
なぜ歯は溶けるの?
歯を磨いた時などに、歯茎から少し出血するような歯肉炎があり、その状態が1年365日続くと、その歯肉の炎症が原因となり、1年でほんのわずか0.5mm程度骨が吸収してしまうのです。
ポイントは、骨は吸収するが、歯肉は吸収しないという点です。骨は溶けるけれど、歯茎は溶けないという事です。歯茎の中の「骨だけ」が、水面下で上から溶けて、骨の上面が下へ下がっていくイメージです。まさに、骨なしの肉だけが残る感じです。
溶けた骨は「二度と再生しない」
もうひとつのポイントは、一度溶けた骨は「二度と再生しない」という事です。
もし、一度溶けた骨の再生に成功した場合は、それは「再生療法に成功した」という、夢のような快挙に成功したという偉業になります。
もしも、1年で0.5mmも骨が吸収していく歯があるとしたら、単純計算で10年で5mm、20年で10mm骨が吸収してしまいます。人の歯の根の長さは13mmくらいしかありませんから、10mmも溶けたら、もう、ぐらぐらです。何も対策をうたないと、大体、25歳くらいから微妙な歯肉炎状態になってしまい、骨の吸収が始まるのが、全国民の平均的な状態なので、20年たった45歳から50歳くらいで、まず何本かの歯がぐらついてきて、あわてて歯科医院を訪れるも、時すでに遅し、何本か抜歯することになってしまい、他の歯も怪しい状態になってしまっている、というのが、「普通に典型的」な日本人の平均です。
歯周病に関して、覚えておいてほしいこと
歯周病に関して、みなさまに覚えておいて頂きたいことは、3つです。この3つは、忘れないでいてください。
1
骨が溶けて、
歯が抜ける病気2
自覚症状が、
ほとんどない3
歯みがきだけでは、
治らない
歯周病の予防は「とても簡単」
歯周病はどのようにすれば、予防したり、進行を止めたりすることができるのでしょうか?
実は、歯周病を予防することは「とても簡単」です。歯の表面に付着した汚れを、溜め込まないようにすればいいのです。
みなさんも、歯医者さんに行って、歯石をとったり、クリーニングしてもらったりして、歯がつるつるになって、とてもさっぱりした気分になったご経験があるかもしれません。しかし、毎日歯みがきをしていても、数か月経つと再び歯に茶色い着色が付いて来たり、歯が黄ばんで来たり、歯石が付いて来たりするのも、ご経験があるかも知れません。
どんなに歯みがきが上手な人でも、クリーニング後3カ月もすると「バイオフィルム」と呼ばれる、ねばねばざらざらした付着物が、歯の表面に堆積してくることが科学的に証明されています。
逆に、3ヶ月に1回位、バイオフィルムの除去に歯科医院を訪れれば、それだけでほぼ「歯周病は予防」出来ることがわかっています。とっても「簡単」ではありませんか?
歯周病の予防は保険でできる
実は、平成28年度から厚生労働省が「歯周病の予防」に保険点数を新たに設定し、「歯周病の定期管理」が、保険でも出来るようになりました。従来のように歯周病の「定期検診」で「初診料」が掛かることもありません。継続的にずっと「再診」で受診できる、まったく新しい概念です。
SPT2(サポーティブペリオドンタルセラピー、歯周病安定期治療)というものが、それです。
ただし、前述いたしましたように、「かかりつけ強化型歯科診療所」でのみしか、行う事は出来ません。
当院も平成29年春に「かかりつけ強化型歯科診療所」として認可されました。みなさまに、しっかりとしたSPT2がご提供できるよう、努めさせて頂きます。