予防治療
虫歯は「治せない病気」だから、予防治療をおすすめしたいですね
虫歯を削って白い被せ物をすれば、外見的には”治った”ように見えますが、歯の失われた部分をよく似た色の被せ物で”補った”に過ぎません。
一度、虫歯に なってしまった歯は、現代医学では元に戻すことができないのです。
知ってほしい、虫歯・歯周病予防のホントの話
だからこそ、私たちは歯科医師、歯科衛生士というライセンスを活かし、虫歯や歯周病にならないように予防するお手伝いをしたいと願っています。皆さんが一生自分の歯でしっかり噛めること、つまり寿命より長く歯を保てるようなお口の環境づくりのサポートをすることが願いでもあり、義務でもあると思うのです。
このページでは、予防治療について興味、関心を持っていただき、正しいケアの方法についてご理解いただければと思います。
歯科先進国アメリカの最先端の予防治療”新常識”とは?
アメリカ最先端の予防の考え方では、「歯みがきで虫歯は予防できない」!?
歯科先進国と呼ばれるアメリカのある研究機関で、「歯みがきに虫歯予防の効果が薄い」という驚きの発表がありました。もちろん、きちんとした科学的根拠のあるデータも取られています。
幼い頃から「虫歯にならないように歯みがきしなさい!」と言われてきた皆さんには、にわかに信じられないお話かもしれません。では、虫歯予防にはどんな手段が有効なのでしょうか?
同じくアメリカでの発表で、次の手段が有効であると発表されています。
●虫歯予防に有効な手段
【効果大】…フッ化物(フッ素)、シーラント
【効果中】…糖分の摂取を控えること
【効果小】…ご家庭でのブラッシング
※出典:各種予防法の評価と推奨(米国予防医学研究班,1989)
フッ素塗布とシーラントで虫歯を予防しましょう
フッ素はミネラルの一種で、歯の表面に塗ることでエナメル質を強化し、虫歯になりにくい強い歯をつくることができます。
また、シーラントとは、生えたばかりの永久歯の溝をレジンと呼ばれる素材でふさぐ治療です。生え替わったばかりの奥歯の永久歯は溝が深く、汚れが溜まりがちです。汚れが溜まって虫歯にならないように、シーラントを行うことで虫歯を予防することができます。
当院では、これらの治療を小児歯科や学童期の定期検診に取り入れて、お子さんの虫歯予防に力を入れています。
虫歯予防に有効な糖分摂取のコントロール
●脱灰と再石灰化について
虫歯の原因は、食べ物の糖分から虫歯菌が作り出した酸でカルシウムやリンといった歯の成分が溶かされてしまうことにあります。このことを脱灰(だっかい)と呼び、脱灰が進むとやがて虫歯になります。
通常は、しばらくするとだ液などにより酸が中和されて、溶かされたカルシウムやリンなどが歯の表面に戻ってきます。これが再石灰化(さいせっかいか)です。
●虫歯になりにくい口内環境とは?
歯の表面では、脱灰と再石灰化の反応が繰り返し起こっています。脱灰と再石灰化のバランスが保たれていれば、基本的に虫歯は発生しないのです。一方、糖分をたくさん取り過ぎたり、歯にプラークがつき細菌が繁殖しやすい状態が続く時には、再石灰化が間に合わずに虫歯になってしまうのです。
再石灰化が活発になる環境を作り出すためには、次のような方法がおすすめです。
●再石灰化を活発にする方法
- 飲食(間食)の回数や時間を減らすこと(量は関係ない)
- 砂糖を取り過ぎないようにすること
- フッ化物を用いて、歯をケアすること
虫歯予防と再石灰化の促進には、キシリトールも有効
TVCMなどでも目にする「キシリトール」とは、砂糖や果糖のような「糖」と似た構造を持つ「糖アルコール」のひとつです。糖アルコールは、虫歯菌が酸を作り出す元にならないため、甘味はあるけれど虫歯にならない糖分として注目されているのです。
キシリトールは、虫歯菌にとって見みれば「ニセのえさ」です。虫歯菌が糖とキシリトールを間違えて取り込むことで、酸を作り出す活動ができなくなった虫歯菌はどんどん死滅してしまいます。
また、ガムを噛むことによって、唾液がよく出るようになって再石灰化が促進されるという効果もあります。とはいえガムやタブレットだけでは予防効果は低いので、他の方法と合わせてご利用ください。
ブラッシングは「歯周病予防」に有効
では、ご家庭でのブラッシングはしなくても良いのでしょうか?
答えは「NO」です。ブラッシングは虫歯予防にはあまり効果がないということがわかりましたが、歯周病予防には有効な手段と言えます。適切なブラッシングで歯垢や歯石がたまるのを防ぐことで、歯周病を予防することができるのです。
ブラッシング以外でも、次のような方法が歯周病に有効な手段として発表されています。
●歯周病予防に有効な手段
- 家庭でのしっかりとしたブラッシングとクリニックでの歯石除去
- グルコン酸クロルヘキシジン(コンクール剤などの洗口液に含まれる成分)による、うがい。
- 食事の改善や、煙草やお酒を控えるなど生活習慣の見直し
※出典:各種予防法の評価と推奨(米国予防医学研究班,1989)
グルコン酸クロルヘキシジンとは?
グルコン酸クロルヘキシジンは、コンクール剤に代表される洗口液に含まれる、歯周病菌に有効な成分です。学術的論文として、『0.36%以上のグルコン酸クロルヘキシジンは歯周病予防に対して効果があります』という、きちんとした科学的根拠のあるデータもあります。
食事や生活習慣の改善
歯周病を予防するための食生活や生活習慣の改善にはいくつかのポイントがありますので、こちらでご紹介させていただきます。
●食事は低カロリーで
高カロリー食を控え、低カロリー、高食物繊維・高カルシウム食を心がけるようにしましょう。肥満や糖尿病などは、歯周病を悪化させる原因にもなるため、全身の健康を維持するためにもご注意ください。お酒やタバコを控えることも重要です。
カルシウムは歯を丈夫にして、再石灰化も促進させ、食物繊維は歯の汚れをきれいにする働きがありますので、意識して摂取するようにしましょう。
●糖分を控えましょう
甘くて美味しい糖分ですが、虫歯菌や歯周病菌の好物でもあります。できるだけ糖分は控えるようにして、甘いものが欲しい時はキシリトールなどの虫歯になりにくい甘味料を使ったスイーツを選んでください。
エアフローとは
エアフローは、専用の粉末を歯に吹きかけて歯の表面の汚れを取るための装置です。
非常に細かいパウダー状の粒子を歯に吹き付け、歯の清掃を行っていきます。歯や歯肉にも負担をかけない上に痛みもありません。
エアフローを使う事で、歯周ポケット内に入り込んだプラークの除去効果が高く、通常の器具では届かないような細部の細菌まで掃除をすることが可能になります。
当クリニックはスイスのEMS社製のエアフローを使っており、虫歯や歯周病の予防、再発防止に役立てています。ブラッシングと歯科衛生士によるメンテナンスに加えて、エアフローを使うことでより効果的に行う事により、歯周病の予防を効果的に行う事ができます。
●エアフローは、こんな方におすすめです。
- タバコのヤニ、ステイン(着色)が気になっている方
- くすんだ歯をきれいにしたい方
- 口臭が気になる方
- つめもの、被せ物、差し歯、インプラントなど人工物が入っている方
- 矯正治療中の方
- 歯の健康を積極的に保っていきたい方
●エアフローを使った歯面清掃と、使わない歯面清掃での汚れの落ち方の違い
歯の表面に着いたバイオフィルムやプラークは食べかすが細菌によって分解されたもので、プラークは時間が経過すると固い歯石に変わり、バイオフィルムは細菌の膜なので、歯面にこびりつくと歯磨きでは簡単に除去することができません。
しかし、エアフローは、従来の器具では完全に落とせなかった「バイオフィルム」を落とし、歯や歯肉にダメージを与えずに汚れや着色を除去することができます。
●エアフローのメリット・デメリット
<エアフローのメリット>
- 通常のクリーニングでは落とせない汚れも落とすことができる
- 清掃に時間がかからない
- 清掃後の汚れがつきにくい
<エアフローのデメリット>
- お体の状態によってはできない場合がある
- まれに知覚過敏のような症状が出る場合がある